デザインのことば

ノスタルジー/Nostalgia

全く知られていないとは思うが、本来は医学用語である。17世紀末、スイス人医師、J・ホッファーが、祖国を離れた人々が精神的な衰弱を呈する病に関して、その精神的苦悩を総体的にとらえる言葉として、ギリシャ語の帰郷=nostosと、苦痛=algosからつくった言葉…

ノーマライゼーション/Normalization

この言葉は、1950年代にデンマークの法律家であり行政官であったN.E バンクミケルセンが、知的障害のある子供たちの福祉行政を政府に提言するためのコンセプトとして使った造語である。デンマークではノーマリゼーションと発音する。当初、知的障害のある子…

ノイズ/Noise

本来のノイズは、信号(シグナル)を形成する音情報と、雑音という意味のノイズに分類される。ところが現在の情報理論では、信号の性質や内容に影響を与える恐れのあるデータの乱れをノイズとして限定している。このことからまぎれ込んだ無関係なデータを意味…

ノエシス/ノエマ/Noesis/noma

どちらもフッサールの現象学において用いられる、ギ1jシャ語の見る=noeoに由来する言葉であり、概念である。ノエシスとは、精神的な知覚作用としての「考える作用」を意味し、その対象としての精神的に知覚されたもの、つまり「考えられたもの」がノエマであ…

ネットワーキング/Networking

社会的な個人間や集団間でのネットワーク形成を意味する。ネットワークという言葉が放送網に由来することを受け、特に1980年代以降その機能的な統合性を社会運動論の文脈に適合させた言葉として定着してきたものである。いわゆる「草の根運動」に見られる、…

ネットワークモデル/Network model

ストレートにこの言葉を定義すれば、社会現象を点の集合と見なし、点と点を繋ぐ線の集合までを表現し、それを人々が意識化しているということである。つまり、個人であれ集団であれ、行為者が点となり、態度や資源、情報など行為者の間で交換されるすべてを…

ネットワーク/Network

本来は、米国の放送業界から生まれた言葉で、ラジオの中継網やテレビのマイクロウェーブ回線が網の目のようになっていることに由来する。特にテレビの回線網の全国的な一元化による、中央主権的な運用と管理体制による放送網の形成という考え方のキーワード…

ネオ・ダダ/Neo-Dada

ネオという接頭語は、「新たな」という意味で、ネオ・クラシズムや、ネオバロックなどとして表現される。そのなかで、ネオ・ダダを取り上げたい。まずダダは、第1次世界大戦中に欧米で起こった芸術運動である。ダダという言葉自体、ルーマニアの詩人丁・ツァラ…

ネクロポリス/Necropolis

すでに建築界においても、忘れられている概念であるが、1938年に文明評論家、ルイス・マンフォードが著書『都市の文化』の中で、都市の発展と衰退を段階的に捉え、最後の段階として提示したコンセプトである。経済的に集中化する富と拡大する人口によって、メ…

ヌード/The nude

裸体画、裸体像、裸身画像、つまり人間の裸の状態、あるいは人間態をした神や悪魔を表現した絵画や彫刻全般を表し、全裸状態だけでなく、身体の一部を衣服などで隠しているものも含む。元来は人間やその対象となるものの生命力の象徴が第一義であった。しか…

ヌミノーゼ/Numinose

人間には、危険を回避しようとする根元的あるいは深層的心理として、不安、恐怖、畏怖という心理作用があり、人間はその危険からなんとしても逃げ出したいと願う。 R. オットーが著作『聖なるもの』(1917)で、聖なる力を意味するラテン語のヌーメンから、…

ヌーベルバーグ/Nouvelle vague

フランス語で「新しい波」を意味する。50年代後半から60年代にかけての映画界における新しい映像表現の運動や流行などを指す言葉である。特に、フランスを中心として、フランソワ・トリュフォーの「大人はわかってくれない」(1959)や、ジャン=リュック・ゴ…

布/fabric in Japanese

麻、葛(くず)、苧(からむし)などの植物を素材として、その繊維を使った織物を元来意味しており、絹および毛織り以外のすべての織物の呼称であった。しかし後に、木綿もそのなかに含まれるようになった。今日では、絹をも含めて織物の総称となっている。…

塗り/coating

器物の表面に、塗料を付着させ、乾燥させて皮膜を形成させることを塗りという。一般的には「塗装」である。塗装とは、器物などの保護、耐水、耐火、耐湿、耐熱、防音、防燃、電気絶縁などを目的としている。これは性能的な塗装、あるいは機能的塗装と呼んで…

人間機械論/Theory of human machine

18世紀のフランス人哲学者、ラ・メトリーは徹底した唯物論的立場から『人間機械論』(1748)を著した。彼はこのなかで、人間は精神と身体すべてが機械であるとする議論を投げかけ、当時の自然科学や医学的学識、さらに精神現象までが機械的な物質現象に還元し…

二元論/Dualism

1881年の井上哲次郎による『哲学字訳語彙』により、dualismの訳語として定着した。一般的には、宗教的な多元論の一種から派生している。実在性を考察する際に、相反する2つのものを対峙させながら論証する宗教的な思考論である。原典は、英国の東洋学者トー…

人間中心主義/Human-centered theory

現代の高密度な技術の進展は、かえって人間に技術への不安感や不信感を抱かせるようになってきた。そこで、技術と人間の関係をよりよく方向付けようとするための、人間を主体にした考え方を「人間中心主義」と呼ぶ。これは中心的な存在としての人間から、技…

人間工学/Ergonomics

人間と機械や機器、機具などとの整合性や適合性を工学的に解決しようという人間科学である。第1次世界大戦の頃から、この研究はスタートしている。Ergonomics、あるいはHuman Factors Engineeringなどに対して、心理学者の松本亦太郎が初めてこの訳語を用い…

認知科学/Cognitive science

認知科学とは、脳と心の働きを情報科学的な方法論に基づいて明確化し、人間理解を深めるための知的思考科学、つまり脳の営みの学問である。したがって、認知科学の対象は、心理学、言語学、情報科学、計算機科学、神経科学、教育学、文化人類学などとの学際…

ナビゲーション/Navigation

本来は、航海術や航空術を意味している。走行しながら現在の位置と目的地までの進行方向や距離を測定し、運転状況までをシステムとして認識する手法とその具体的な装置を指示する言葉である。現代では、この本来の意味に最も適合するものとして、カーナビゲ…

ナショナリズム/Nationalism

ナショナリズムとは、あるネーション(国家)やある民族が統一、独立、そして発展を目標として、構成員の意識をその目標へ向かわせる思想または運動のことである。訳語としては、国家主義、国民主義、民族主義というのが温厚な印象の語感として一般的である…

ナレーション/Narration

話し方、話法、そして話術のことである。この意味から拡大し、映画やテレビなどで、画面外から登場人物の心理やストーリーの解説を語る、ナレーターという役割や職業を指す。 話法とは、「語り」に由来する。語りとは、口頭的言語活動であり、カタルの名詞形…

ナノテクノロジー/Nanotechnology

日本語では、「超微細化加工技術」、あるいは「極微科学の技術化」という訳語が当てはまる。超微細化とは、nm(ナノメートル)=10億分の1mという単位精度の加工や計測を扱うということである。この技術はマイクロ・マシン(超小型の機械)によって、10mm3以…

ナレッジマネジメント/Knowledge management

コンピュータ技術の発達によって、情報化時代が到来するという社会学的な予知は、すでに1970年代前後からあった。その予測仮説の背景には、「意識革命」というドイツ的な発想があったと言われている。その後、本格的なパソコンの登場は、社会の情報化に進展…

都市/urban area

都市は、明治中期以後の言葉である。市や町という行政上の言葉とは、全く別の概念である。英語のtownやcityは、集落の規模的な単位を表しているが、日本語の都市という概念に対しては、urban areaが最適な訳語だと言われている。 かつて人間の居住形態は「集…

トポロジー/Topology

「場・場所」を意味するギリシャ語のトポス(topos)に由来する。ドイツの数学者J. B. リスティング が1847年の著書『トポロジーの初歩』で初めてこのことばを使った。日本語では位相幾何学と訳す。トポロジーの数学的な内容を充実させたのは、フランスの数…

道具/tool

室町時代以後の日本語である。漢語では仏教で使用する器具、いわゆる仏具から、道具という言葉は生まれたと言われている。つまり、人間がある特定の目的を実現しようとする場合に、物的な手段として運用しようという意志を反映する媒介物である。英語のtool…

透視図/perspective projection

目で見るのと同様に、視覚的な遠近感が認識できる物体図や構造物などの描画のことである。美術においては、遠近法による描画技法としての定義から、その歴史的な進展を辿ることができる。基本的には数学的な空間図形を平面上に表示する1つの方法であり、画法…

道具/implement

室町時代以後の日本語である。漢語では仏教で使用する器具、いわゆる仏具から、道具という言葉は生まれたと言われている。つまり、人間がある特定の目的を実現しようとする場合に、物的な手段として運用しようという意志を反映する媒介物である。英語のtool…

ドキュメンタリー/Documentary

文書や証書、あるいは事実記事という意味でのラテン語documentumを語源としている。1920年代に、記録映画作家であるジョン・グリアソンによって、ドキュメンタリー=事実の記録という呼称になったと言われている。映画による記録ということでは、映画の父と呼…